思考を変えて組織の問題を解決!『エンジニアリング組織論への招待』第1章【読書感想】

組織内でのトラブルや問題を、エンジニアの視点・思考で解決していくという本です。
エンジニアではない人でも読みやすいように書かれているように感じました。(非常に読みやすかった!)
第1章を読み終えたので備忘録としてまとめます。

書名:『エンジニアリング組織論への招待』
著者:広木大地
出版社:技術評論社

「全てのバグは思考の中にある」

これ、とても気に入ったワンフレーズ。

多くの理不尽や感情の対立が発生している状態を「人間の思考の中にバグが含まれている状態」と著者は述べています。
人や物にフォーカスを当てるのではなく、人の思考そのものにフォーカスを当てていくのが素晴らしいと思いました。

「人間の思考の中にバグが含まれている状態」を改善して、仕事を前に進めるために、自身の所属する会社やチームをより成功に導くためには考え方を少しだけ変えていく必要があります。
これを「思考のリファクタリング」と呼んでいます。

「思考のリファクタリング」とは

頭の中で発生してしまう無駄なプロセスを削除して、考えるときの指針を持つことで、問題解決に向かって明確に行動ができるように促すものです。

『エンジニアリング組織論への招待』P.10より引用

「エンジニアリング」の定義

本書によると、「エンジニアリング」とは「曖昧さ」を減らし、「具体性・明確さ」を増やす行為と書かれています。
「曖昧さ」とは、まだ決まっていないことで、はっきりとしていない、将来どうなるかわからない確実でないものであり、「不確実性」と言い換えられます。

エンジニアリングで重要なのは「どうしたら効率よく不確実性を減らしていけるのか」です。

不確実性を減らしていくために

「不確実性」とはつまり、「わからないこと」。
「わからないこと」はたった2つしかありません。

未来」と「他人

これら2つの不確実性から逃れることはできません。

「わからない」から「不安」が生まれる

不確実なものに向き合うと「不安」が伴います。それは「わからない」ことが自分自身を脅かすと考えてしまうからです。その結果、人は本能的に「攻撃」か「逃避」を選択してしまいます。
不安を減らすためには、「わからない」から「わかる」状態にする。
つまり不確実性に向き合うしかありません。

不確実性を下げること=情報を生み出すこと

「不確実性を下げること」は「情報を生み出すこと」です。
これがエンジニアリング活動の本質の一つです。

情報を生み出す3つの考え方があります。
それが「論理的思考の盲点」「経験主義と仮説思考」「システム思考」

論理的思考の盲点

問題を解決するにはまず、起こった事実を正しく認知することが重要です。つまり、起こった「事実」とそれに対する「感情」や「意見」を切り離して捉える必要があります。

しかし、それは至難の技であり、エンジニアでも正しく事実を認知できないことがあります。
では、どうしたら良いか?

論理的に考えるためには「非論理的に考えてしまう」瞬間を知ることが重要です。そして、感情的になる瞬間を知り、その影響を少なくします。

「認知の歪み」が生み出したネガティブな思考

事実はありのまま、ただあるだけです。

たとえば、「雨が降った」は事実です。そこに良し悪しはありません。
しかし、人は雨が降ったことで憂鬱になったり苛立ったりと嫌なイメージを取る人がいます。このようにこの事実を見て頭の中で認識することを「認知」といいます。

実際に起きたことと、それを人が感じた認知では、大きな隔たりがあります。
自分の認知がどのように歪むのか、歪みうるのかを知っておくことで、「それが事実ではないかもしれない」という可能性を考えることができるようになります。

このように、事実を認知できないという前提に立つことで、事実らしきものを客観視できるようにしていくことができます。

怒りの正体

人は危機や恐怖を感じた時、自分自身を守るために「怒り」を発火させ、相手に対する攻撃と防御を無意識に起こそうとします。
つまり、恐怖は「怒り」に変わるのです。

「怒り」が発生しているときは、自分または自分が胎児にしているものに被害が及びそうだと感じています。
「怒り」を感じたときは、同時に「何が大事なのか」を知る機会でもあります。

怒りの対処法

「怒り」の感情をそのまま伝えてしまうと、相手は同じく「恐怖」を感じ、「怒り」のトリガーを引きます。そのため、怒りの感情が連鎖的に広がり、大きなトラブルに発展してしまいます。

では、「怒り」を感じたときどうすれば良いでしょうか?
「怒り」を「悲しみ」として表現して伝えることが重要な方法の一つです。

多くの場合、相手の大事にしている部分だと知らずに、ぞんざいな扱いをしてしまうというミスから始まります。
もしあなたが誰かに怒りを感じたときは、「それは自分にとって大切なことで、その発言は大事なものをぞんざいに扱われたようで悲しい」とあなたを怒らせた相手に伝えるのが良いです。

問題解決より問題認知の方が難しい

本当にある問題を正しく認識するためには、何重にも包まれたオブラートを剥がし、他人や自分自身の歪みを取り除くという工程が重要です。
問題を正しく認知することは難しいです。
「自分は間違っているかもしれないが、それに早く気付く方が良い」と思考のパターンを変える必要があります。

経験主義と仮説思考

経験主義とは

「不確実性」を確実なものにするには、実際に行動を起こして確かめる以外の方法はない。そのような思考・考え方が経験主義です。

情報が揃っていなくて判断できない難しい状況にあるとき、「どう行動を起こせば次の一手につながるか」「何がわかれば判断できるようになるか」を考えてそれを「確かめる」行動を起こします。
また、経験主義は「コントロールできるもの」を操作し、「観測できるもの」の結果を得ることでしか前に進むことができないことを意味しています。

たとえばコントロールや観測ができない「部下の能力」や「上司の内心」にフォーカスに当てるのではなく、コントロールや観察ができる「部下の行動」や「上司の行動」にフォーカスを当てるのです。

仮説思考とは

わずかな情報からそれを説明可能とする大胆な思考展開・モデル化を行い、それを検証するための行動につなげる推論方法です。

たとえば、「2つの大陸の海岸線の形が似ている」というわずかな痕跡から「元は1つの大陸で2つにわかれたのでは?」と大胆に考え、何か将校があるはずだと次の行動につなげていくという考え方です。

ここで重要なことは、「わずかな痕跡であっても」「確かめる行動につながる」ということです。

システム思考

システムとは「全体の関係性を捉えること」、「システム思考」とは要素同士の関係性に注目して、問題の構造を解き明かす考え方です。

わたしたちが日常的に対立が起こるのは、多くの場合、それぞれがぞれぞれにとっての「部分」だけしか見えていないことが原因と考えられます。
これを「システム思考」をもって全体の関係性を捉えて、全体にとって最適な答えを出せるようにします。

フィードバックサイクルが重要

ある原因に対する結果が、その原因自体に変化をもたらすという時列系関係のことを「フィードバックサイクル」といいます

大きく分けると、「拡張のフィールドバック」「抑制のフィールドバック」があります。

▼「拡張のフィールドバック」の例
原因:サッカーが好きなので練習する
結果:上達して勝利を得たり褒められる
拡張のフィードバック:そしてサッカーがもっと好きになる

▼「抑制のフィールドバック」の例
原因:勉強をしないので、無理やり勉強させられる
結果:あまり成績が伸びない
抑制のフィードバック:そして勉強をやらなくなる

個人ではなく関係性に注目する

わたしたちはつい、何か問題が発生するとその原因を個人、とりわけ嫌いな誰かの責任として押し付け、不毛な言い争いに時間を使ったり、その対立自体を恐れて問題を温存したままで日々を過ごします。

しかし、その性質が生まれてしまった背景には「個人同士の関係性の問題」があるかもしれません。

個人の性質そのものを変えるのは難しいですが、関係性を変えるのは難しいことではありません。
システム思考というのは、個々人の性質よりもむしろ、個々人の関係性に問題の構造を見つける考え方です。

問題解決より問題発見の方が難しい

対立に見える問題を、対立にならない全体像をあぶりだすことと、その解決を個人の問題にせず、関係性の問題に変換して、本当の問題を発見することが大切です。

人間の不完全さを受け入れる

  • 人は正しく事実を認知できない
  • 人は「いくら理屈で考えても答えが出ない問題」に時間を浪費してしまう性質がある
  • 人は問題を個人の責任にしたり、全体像を見失ったり局所最適な思考をしてしまう

これらを踏まえた上で、自分または他人は誤った認知・行動を起こすものだと受け入れて、歪んだ認知や間違った行動を自覚して正すことが大切です。

コミュニケーションの不確実性

  • 他者理解の不確実性:人は他人や事象を完全には理解できない
  • 伝達の不確実性:コミュニケーションが到達するとは限らない
  • 成果の不確実性:仮に理解されたとしても予想されたように行動するとは限らない

「自分は他人ではない」「他人は自分と同じではない」
とても当たり前のことですが、忘れがちな事実です。

情報の非対称

同じ目的を持った集団で、何かの情報を片方の人が知っていて、もう片方の人が知らないという状態を「情報の非対称」といいます。
上司が把握している情報を部下が知らなかったり、現場が知っている情報を経営陣が知らなかったりするなどの状態です。

無能で十分に説明のつくことを悪意にせいにするな

ロバート・J・ハンロン

限定合理性

人はみな、同じように認知することはできません。
認識範囲や能力の限界から、限られた範囲でしか合理的な行動が取れない性質が「限定合理性」といいます。
個人にとって最適な戦略が全体にとって最適になるとは限らないのです。

真に求められるコミュニケーション能力とは

  • コミュニケーションの不確実性を減少させる能力
  • 組織内において連鎖的に発生する不確実性のループを止めることができる能力

これらが組織に真に求められるコミュニケーション能力と言えます。

まとめ

わからないものがあった時に、人は「回避」するか「攻撃」するかを本能的に選択します。その結果、事実を正しく捉えることができず、歪んだ認知をしてしまいます。どんどん自分のことしか見えなくなり、思い込みが事実であるかのように考えてしまいます。
他人に完璧を求め、そうでなかったことが、思い込みをより強くさせてしまいます。

あれ、これ、誰かに似ていませんか?
そう、トランプ大統領に怖いくらい当てはまりますね。

逆に、事実を正しく捉えて論理的に考える、問題発見や問題認知に長けている人はテレビやアニメに出てくる「名探偵」に近いと思いました。
「金田一一」「江戸川コナン」「シャーロック・ホームズ」等

彼らは人に対する偏見を持たず、起きた事実にのみフォーカスを当てて謎を解決していきます。
まずは彼らをお手本にした方がわかりやすいので、彼らの言動、思考を分析したくなりました。

推理物を読むことが組織問題の解決や自己成長に繋がりうるかもしれないという新たな発見をしました。

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