メンタリングで成長を促す|『エンジニアリング組織論への招待』第2章【読書感想】

『エンジニアリング組織論への招待』第2章は、第1章で学んだ「思考リファクタリング」の考え方を使い、対象となる人自体の考え方を少しずつ変えて、問題解決の力を育てよう!というものです。
(やはり非常に読みやすい!)
第2章の備忘録としてまとめます。

書名:『エンジニアリング組織論への招待』
著者名:広木大地
出版社:技術評論社

メンタリングとは

「メンタリング」=自ら考える人材を作る技術

最初から、自立してなんでもこなせる人ばかりではありません。部下やメンバーの成長を促して、徐々に自立して考えることができる人を育てていく必要があります。では、ここでいう「自立した人材」というのはどういう人なのでしょうか?

自立した人材とは

自立した人を「自立型人材」、そうでない人を「依存型人材」として定義した場合、それぞれの特徴は下記のようになります。

依存型人材:
・問題を与えられてから考える
・問題と解決策を渡されてからから動ける

自立型人材:
・自ら問題を発見し解決することができる
・問題について、自分事ととして捉えている

自分が抱えている問題に対して、依存的に振る舞う人は、物事の原因を他人に求め、善悪で判断を行います。同僚にネガティブな愚痴をこぼしたり、周囲を敵味方で捉えてしまったり、自分の仕事を限定的に捉えて、自己防衛的に振舞います。

それに対して、自立型人間は、今より良い状態にするためには自分がどうしたら良いか?という問いを常に自分にします。そのため、課題に正面から向き合うことができ、解決のために人間関係のリスクに恐れずに行動をとることができます。

メンターの役割

近年では、ビジネスや教育の現場で「メンター」と呼ばれる年長者を若いメンバー(メンティ)につけ、良き導き手としてサポートするようになりました。この際の指導・支援方法を「メンタリング」と呼びます。

メンタリングにはメンティの成長を促すテクニックが必要です。これは、特殊な技能ではなく意識的に行えば誰もができることだと考えています。
また、メンターは「何か課題を指摘する」ための存在ではありません。課題に一緒に向き合い成長を支援するというコミットが求められます。

メンターの役割1:自己説得を促す

メンタリングでは、メンティが見えていない課題に自分から気づかせることを重視します。
人は、人から与えられた説得による「他者説得」より自分自身で気がついた「自己説得」の方が非常に高い納得感と自己効力感を覚えます。

例えば、ある課題に直面し向き合っている時、メンターに「これが答えだよ」と教えてもらっても納得感があまり出ません。一方で、ふと立ち寄った本屋で読んでみた書籍に、今まさに思い悩んでいることへの答えのようなものが見つかった時、非常に高い納得感と自己効力を覚えた。そんな経験はありませんか?

周りの状況などから、自ら今までわからなかったことを理解した状態を「自己納得」と言います。自己説得には「他人が質問で促す」「体感を伴う」「行動の変化が発生しやすい」という特徴があります。

自己設定を生み出すには、答えを言うのではなく、適切な質問の積み重ねが重要です。質問によって、より望ましい解決策を自ら発見できるように促すことができます。

「悩む」と「考える」の違い

メンタリングを進めるにあたり、メンターはメンティが「悩んでいる」のか「考えている」のかを判断することが重要です。この2つは似ていて非なるものです。

「悩んでいる」というのは、頭の中に様々なことが巡り、もやもやが取れない状態だと著者は考えています。この状態になったらメンターのサポートが必要で、共に考えるための戦略を立てていく必要があります。これは手が動いていない状況が続くのでメンターもメンティも観測できます。

「考える」というは、課題を書き出し、次に進むために必要な情報を書き出したり、集めたりして忙しく動いています。答えが出ていなくても、次に何をしたら良いかが明確で、手が止まるということがありません。

このように、メンティが行動できていない時は、メンターは悩みを聞き出して気付きを促して「考える」に変えていく必要があります。

メンターの役割2:「解けない問題」を「解ける問題」に変換する

「悩んでいる」メンティは解けない問題を抱えています。メンタリングは、この問題が解けない理由を1つずつ無くしていき、抱えている「解けない問題」を「解ける問題」に変換することです。

そこで重要になるのが「傾聴」という技術です。
「傾聴」では、相手を中心としながら、相手の思考が整理されて前向きに考えられるように支援することを意識して会話を行います。

そして、傾聴によって判明したメンティが抱える問題を「可視化」「明晰化」していきます。
メンティが抱える問題をホワイトボードやノートなどに書き出すことで、メンティは自分が抱えている問題を客観視できるようになっていきます。
また、可視化していく工程で、感情的に癒着した問題を引き剥がして、何が問題かをはっきりさせる「明晰化」も行います。

問題を全て可視化し終えたら、今度は「リフレーミング」を行います。
ある考え方や条件・前提に囚われて問題が解けなくなっている場合があります。
そこで「この前提がなかったらどうなりますか?」というように前提を外して考えるよう促します。
そうすることで、本質的な目的のためには今抱えている前提を外しても良いのだと気付き、解決が導かれることがあります。

メンターは、メンティの問題を直接解くことはできません。メンターにできることは、問題を簡単な問題に変換することだけです。

メンターの役割3:心理的安定性が高い状態を作る

自分の弱さやミス、相手との意見の違いや直した方が良い所を率直に飾らずに話しても、相手との関係性が決して崩れることがないという確信が持てる状態を「心理的安定性が高い状態」といいます。
メンターとメンティはこうした心理的安定性が高い状態を構築していく必要があります。
そのためにはメンティ側の弱さと失敗を開示してもらい、メンター側も自分の弱さと失敗を開示する状況を作り上げる必要があります。

メンターの役割4:行動に注目する

メンタリングの最終工程は「これからどうするか」を話し合い、合意し、次回に振り返ることを約束することです。このとき重要なのは「行動」に注目することです。

メンターはメンティの「行動変化」を促すことでしか成長へと導くことができません。それは、内心を直接的に変化させることができないからです。メンティの行動変化に対して深く観察をする必要があります。

行動変化のためには「行動を促進する要因」はフィードバックを増やし、適切に承認していくことで強化し、「行動を抑制する要因」は環境や構造を変えるための行動に変換してその行動を促していきます。

まとめ

わたしはまだ誰かを指導したり導いたりする立場ではありませんが、本書を読んだことで、上司がどのようなことを期待しているか、なぜそのようなことを言ってきたのかを考えるようになりました。
身近にすごく指導が上手でわかりやすいと思っていた上司や同僚がいますが、「メンタリング」という技法を上手に使う方々だということがわかりました。

わたし自身は、まず「自立型人材」になってみせます!

本書にはメンタリングの具体例や著者が自らの体験談が書かれています。気になった方は是非手に取って読んでみてください。

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