なぜ脂がのっていると美味しいの?『チコちゃんに叱られる!』

2020/01/24放送の『チコちゃんに叱られる!』
福山雅治さん、雨宮塔子さんをゲストに迎えています。

チコちゃん「なぜ脂がのっていると美味しいの?」

マグロがたくさん獲れたから

詳しく教えてくださるのは、畿央大学健康科学部 山本隆教授です。

脂自体に味はない

そもそもお肉の脂身だけを食べて美味しいと思いますか?

実は脂には明確が味がありませんので脂だけを食べても人間が美味しいと感じることはありません。
人間の味覚は5つ(甘味・酸味・塩味・苦味・旨味)に分けられますが、先生によると脂はこの中のどれにも属さないといいます。

脂には味を伝える能力を増強する効果がある

ではなぜ脂がのっているとおいしいのでしょうか?

脂が口の中に入ることによって、食べ物にしっとりとした食感を与え、さらに食べ物の味をより増強するという働きがあるからです。

脂の一部は唾液によって「脂肪酸」と「グリセリン」に分解されます。
その脂肪酸には食べ物本来の旨味や甘味を増強してくれる働きがあります。

私たちが味を感じているのは、舌の表面にある「乳頭」という小さな突起物の中に脳へ味を伝える味蕾という細胞集団があります。
この味蕾がある舌の上に脂がのった食べ物が乗ると脂の一部が脂肪酸とグリセリンに分解され、味蕾が脂肪酸を感知すると味を伝える能力が格段にパワーアップされるのです。

つまり、脂肪酸自体には明確な味はないのですが、食べ物が持つ旨味や甘味を増強して脳に伝えるので嬉しく感じられるのです。

例えば、ほぼ脂で出来ているバターでいうと、トーストに何もつけずに食べるのとバターを塗って食べることで実際に違いがあると思いませんか。
あれもバターの脂の一部が脂肪酸となり、味蕾の受容体を刺激してパン自体の美味しさを増強すると考えることができます。

脂は高エネルギー

さらに脂がのった食べ物を好む理由がもう1つあります。
脂を飲み込んで消化され吸収されると、人間にとって大きなエネルギーになります。

私達が生きていく上で必要な三大栄養素で比べてみると、炭水化物とタンパク質は100gあたり400kcal、そして脂である脂質は100g当たり900kcalと2倍以上です。
このように脂は効率の良いエネルギー源なのです。

すなわち脂を一緒に食べることで「おいしい」そして「体に有益」という信号が脳に送られて幸福感を得ているのです。

江戸時代の人は脂は傷みやすいと処分していた

江戸時代は脂ののった食べ物をほとんど食べていませんでした。
脂がのった魚は腐りやすかったため、流通が難しく、マグロのトロなど脂の多い部分はほとんど市場に出回ることなく処分されていました。

しかし、あることがきっかけで、私達は脂のとりこになってしまったのです。

マグロが大量に獲れてトロ料理が生まれた

それは1810年にマグロが大量に獲れたからです。
江戸の様子がまとめられている本には「1日1万本を獲る」」と記されています。

この番組の食の歴史のご意見番の方(食文化研究家 永山久夫さん)に聞いてみました。

マグロのトロがあまりにも大量に処分されるのを見て、もったいないと感じた江戸の庶民はなんとかせずに済む方法はないかと考えたといいます。

その結果として生まれたのが、「まぐろ鍋」というトロを美味しく食べるための料理です。
「マグロ鍋」とはトロとネギを醤油で煮た庶民の味です。

火を通すことで傷みやすいトロを安全に食べることができ、さらにネギにトロの脂が染み込み、旨味が倍増したことから、マグロのトロがあっという間に庶民に親しまれていきました。

トロをきっかけに脂を食べる文化が広まった

その結果、トロの美味しさが殿様や上流階級にも広がり、日本人の脂を食べる文化が定着し始めました。
その後、明治になるとバターや焼き肉などの西洋の食文化が伝わり、日本人はより脂を好むように変化していったのです。

つまり、今までマグロのトロを食べなかった日本人の脳に「脂ののったトロは美味しく、高いエネルギーを持つ食べ物だ」ということが刷り込まれ、「脂のっていると美味しい!」という考えが日本人に広まっていったのです。

あとがき

脂が乗った食べ物を食べられるようになったのは最近の話なのですね。

「縄文時代にマンモスを食べるようになったから」「捕鯨して食べるようになったから」などと予想していましたが、マグロだったとは意外でした。

江戸時代から沖に漁に出る技術を持っていたということでしょうか。
江戸時代を生きた日本人は意外にスゴイのですね。

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