なぜ硬貨には製造年が書いてあるの?『チコちゃんに叱られる』 | 頑張ることをやめたら人生楽しくなった

なぜ硬貨には製造年が書いてあるの?『チコちゃんに叱られる』

2020/9/27放送『チコちゃんに叱られる』
秋野暢子さん、EXILE・松本利夫さんをゲストに迎えています。

チコちゃん「なぜ硬貨には製造年が書いてあるの?」

そういうデザインだから

教えてくださるのは、大阪経済大学経済学部の高木 久 教授です。

今の硬貨に製造年が書かれているのは特に意味はない

1円玉や10円玉などの硬貨に製造年が書いてある理由は 言ってしまえば そういうデザインだからです。
今は特に理由がありません。

しかし 日本のお金の単位が「円」になり、貨幣制度が近代化されたときには硬貨に製造年が刻まれる理由があったと考えられます。
関わっていると考えられるのが金本位制です。

各国と貿易するために金本位制度が誕生

金本位制とは、金(きん)をお金の価値の基準とする制度のことです。
国が持っている金の量に応じて通貨を発行し、その通貨を同じ形の金と交換できることを国が保証します。

この制度が始まったのは19世紀初頭のイギリスです。

産業革命で一躍 世界経済の中心となったイギリスは大量生産した商品を世界中に売ろうとしたのですが、当時 各国の通貨の価値は国によってさまざまで世界共通の基準がありませんでした。
つまり、アメリカの1ドルがイギリスのポンドだといくらになるのかはっきりとはわからなかったのです。

そんな状態で世界中と貿易をすることに不安を感じたイギリスは世界共通の価値を持つ金を基準とする金本位制を世界で初めて採用しました。
イギリスが保有していた金の量に合わせて通貨を発行し、1ポンドを金 7.3 グラムと定めました。

この金本位制を世界中の国が取り入れれば各国と安心して貿易ができると考えたのです。
実際 イギリスと貿易をしたいアメリカやフランスなどが金本位制を導入し、その国が持っている金の量に合わせて通貨を発行するようになりました。

これによって それぞれの国のお金同士の価値を比べることが簡単になりました。

アメリカは1ドルを金 約 1.5 グラムと定めて金貨を発行しました。
つまり、1ポンドは5ドルとほぼ同じです。

フランスは1フランを金 約 0.3 グラムと定めました。
つまり、1ポンドは24フランとほぼ同じ価値ということになります。

日本のお金は世界から信用されなかった

欧米の国々が金本位制度を取り入れつつあるのを見た日本もそれに追いつこうとして明治4年に金本位制を取り入れます。
日本は1円 金 1.5 グラムと定め、その金の量を含んだ1円金貨をつくることにしました。

しかし、日本が作っていたお金が世界で信用度が低かったのです。
実は明治維新直後、つまり明治4年以前にも金貨・銀貨を作っていたのです。

偽造があって品質も悪かったため、日本のお金は外国から信用を失っていました。
そんなときに新しいお金を作ったところで「本当に金 1.5 グラム入ってるの?」と疑われるのも当然ですよね。

硬貨に製造年を入れることで明治政府が硬貨の価値を保証した

明治政府はイギリスから硬貨を作る機体を購入し、 1.5 グラムの金がちゃんと含まれている硬貨を製造しました。
そのときに製造年を入れることで「その年に作られた金貨には間違いなく金 1.5 グラムが含まれている」ということを明治政府が保証したのです。

その後も毎年 硬貨に含まれる金の量を検査し、ちゃんと正しい量が含まれていることを世界に向けて公表しました。
もし硬貨に含まれる金の量が変わったとしても製造年が書かれているので すぐにその硬貨に含まれる金の量がわかることになります。

実際 明治30年に金貨に含まれる金の量をそれまでの 1.5 グラムから 0.75 グラムに変えた際、製造年が刻まれているお陰で他の年に作られた硬貨の価値の違いが一目でわかりました。
こうして日本の硬貨は世界から信用を得たのです。

時代の変化で管理通貨制度に徐々に移行された

世界的に定着していた金本位制ですが次第に終わりを迎えます。

金本位制では その国が持っている金の量と同じ分しかお金を発行できないのですが、第1次世界大戦で世界の国々は軍事品を金で大量に購入したためお金を発行するのに必要なだけの金がなくなってしまったのです。

こうして その時の経済状況によってお金の発行量を自由に管理できる現在の「管理通貨制度」へと徐々に移行していき、金本位制度は終わっていきました。

現在 私たちが普通に使っている硬貨には金が含まれておらず、その金属の価値と硬貨の価値とは関係がありません。
そのため、本来であれば製造年を刻印する必要はありません。

しかし、金貨が流通していた頃の名残から現在も硬貨には製造年が書かれていると考えられています。
つまり、今となっては硬貨に刻まれた製造年はデザインの一部みたいなものです。

紙幣は寿命が短いから製造年が書かれていない

ちなみに紙幣に製造年は書いていません。
なぜかというと、紙幣は硬貨と違って寿命は長くてせいぜい4〜5年です。

市場に出回って古くなった紙幣は日本銀行へ戻され、汚れや破れの程度、偽札が紛れ込んでいないかなどのチェックを受け、使えないと判断された紙幣は裁断され、そのほとんどが焼却されます。
紙幣の寿命は平均で4〜5年なので製造年を入れる意味がないのです。

古くなって裁断された紙幣が焼却されなかった分がどうなるのかというと、最近は様々なものでリサイクルされるようになっています。
例えば ATM の横に備え付けられている現金袋は1袋分の素材の30%に1万円札が約1枚分混ざっています。

さらにトイレットペーパーの1ロールに混ざっている紙幣の量は物によってまちまちですが、最大150万円分のお札からできている可能性もあります。
お値段は約50円ですが、素材が全て1万円札で出来ていたら最高で150万円分使われています。

そういうことも知らず、つい無駄遣いしていませんか?
これを元の紙幣に戻すことができればウハウハですよね。

あとがき

金属の価値と硬貨の価値が違うことにずっと不思議に思っていました。
価値を高めていることは信用度であることに気づいたのはかなり遅かったです。

お金だけでなく人徳も結局は信用ですよね。
「この世は金が全てだ」という言葉がありますが、それは翻って「この世は信用が全てだ」ということになると考えています。

だから子供たちに「大事なのは硬貨や札そのものではなく人がそれに対する価値観(信用)であり、それは絶対ではない」と教えたいです。

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